『GAFA next stage 四騎士+Xの次なる支配戦略』 スコット・ギャロウェイ著, 渡会圭子訳, 東洋経済新報社, 2021
本書は、GAFAが戦略的に作り上げた世界描いた『the four』の続編である。新型コロナによる世界的なパンデミックを経験した現代経済において、GAFA+Xの支配戦略はどのようなものなのであろうか?
新型コロナのパンデミックが起こったことにより、USの株式指数は一時的に急落したがその後急速に回復した。これは、ビッグテックや少数の大企業が莫大な利益を上げているためである。この結果、強者はより強くなり、弱者はより弱くなり淘汰されていくことになった。
パンデミック以前から好調であった企業は、この世界的な危機から多大な恩恵を受け、資本市場から十分な資金を得て、収益の減少を補い、さらに競争力を高め、新たな分野へ進出している。一方、競争力の弱い企業は資本市場から淘汰されていく。この危機に対処していくためには、自社が市場全体、および業界内でどのようなポジションにあるかを理解することが重要である。そして、コスト削減による徹底的な減量も必要である。
第二次世界大戦以降、平凡な製品を大量に生産し、漠然としたイメージでそれを売り込む「ブランド時代」が、インターネットの登場により、ソーシャルメディアの普及とインターネット検索により終焉した。広告会社により作り上げられた「ブランド時代」は、さまざまなデジタル・ツールにより破壊され、広告が力を失った、「プロダクト時代」に突入した。
プロダクト時代には、「商品を製造コストより高い値段で売る」と「商品を無料で配り、他の企業に利用者の行動データを有料で提供する」という大きく2つのビジネスモデルがある。筆者のギャロウェイは、前者を高品質でブランド力があり高価格だが、裏でデータ利用されることが少ないとし、「青」のビジネスモデルと定義した。一方、後者をまずまずの品質で初期費用が安い、あるいは無料であるが、ユーザーのデータとプライバシーを広告主に差し出さなければならないものを「赤」のビジネスモデルとした。いずれ産業界は2つのビジネスモデルに分岐していく、iPhone/アンドロイドやネットフリックス/ユーチューブなど既に多くのものが青と赤に分岐してきている。
新型コロナによるパンデミックは、「GAFA+X(マイクロソフトやネットフリックス)」のようなビッグテックに高業績をもたらした。結果として、我々はビッグテックの世界に生きているということだ。ビッグテックは、「イノベーション」、「不明瞭化」、「搾取」の力で既に持つ特権的な地位を活用して大きな成果を上げているのだ。
このような現代社会において、我々はどのように生きていけばよいのだろうか?
単に初期費用が安い(あるいは無料)に惹かれ、裏で個人のデータやプライバシーが抜かれていることにも気づかず、知らないうちに「赤」のビジネスに貢献してしまっているかもしれない。これまで以上に、現代は自己責任において、隠された部分をも見極めていかなくてはならないのかもしれない。