TechnologyとIntelligenceに憧れて

外資系ネットワーク・エンジニアの独り言。

『欲望の資本主義 2024 - ニッポンのカイシャと生産性の謎 -』

『欲望の資本主義 2024 - ニッポンのカイシャと生産性の謎 -』

 

 2024年の『欲望の資本主義』シリーズのテーマは、「ニッポン」であった。

 現在のニッポンは、課題山積の状態である。

・インフレに追いつけない賃金上昇

・急激に進む少子高齢化

 実物経済はというと、商品を作るための原材料費、光熱費などが高騰しているコスト上昇分を商品の価格に転嫁はシェア低下を招き、円安に伴う外需型産業の景気は上向きであるのに対して、内需型産業は長期間にわたり、フラットな状況である。

 日本経済はというと、人口減少とテクノロジーの新しい波に飲み込まれ、1990年代の余韻に浸り足踏みするスローが進行を選択した結果、労働生産性や賃金水準がほぼフラットな状態を継続する「失われた30年」を過ごすこととなった。今のままでは、このまま40年を迎えてしまう可能性もあるのだ。

かつて、日本企業の優位性とされていた、終身雇用と年年功序列賃金は、労働市場流動性を低下させ、専門性に富んだジョブ型雇用にそぐわなくなってきている。この結果、社会の階層化が進み、多くの人々にとって社会的上昇の機会を得ることが狭まりつつある。さらに、日本では、男女格差の労働市場の中で、才能を活かせていない、あるいは機会を与えられていない状況が発生している。

これまで、日本では、労働を作業ととらえ、作業×かかる時間が労働時間となり、労働の成果にしていた。ここで、労働者の単位時間あたりの単価を設定すると、労働にかかるコストとなる。多くの業種の企業で利用されている作業工数の考え方である。日本では、この作業の結果、商品のような有形資産が生み出されることが一般的であった。

現在は、「脱工業力」、「デジタル化」、「無形資産」の時代に大きく変化している。無形資産とは、ブランド、アイデアなどの形のないものである。こと日本人においては、形のないものは無料と考える潜在的な傾向があり、無形資産への関心が薄いと考えられる。その結果、無形資産が資産に占める割合が他国に比べ低い状況である。また、デジタル化についても、「iモード」による携帯電話からのインターネット接続が普及したなど、当時の日本は最先端に位置していたはずである。だが、半導体スマートフォン、生成AIなど多くの分野で日本は後れを取っていると思われる。

日本は戦後の高度成長という過去の成功体験を捨てることができず、いいものを安く提供することがよいことという日本の文化が長期にわたるデフレ・スパイラルを引き起こしたのだ。そして、ここ数年の物価上昇も経済成長に伴う物価上昇(インフレ)ではなく、単に物価のみが上昇しているように感じる。

このような状況を脱却していくにはどうすればよいのか?

日本経済はパラダイムシフトをすることができるのであろうか?

具体的には、硬直化した労働市場における労働力の流動化と形のない無形資産への信頼と評価が必要であろう。特に、無形資産は、持つものになるか、持たざるものになるか、大きな分かれ道である。現代を生きる我々は、「多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない(カエサル)」状態から脱却し、すべてのものを広い視野でとらえ、正しい方向に進む知識、経験、判断力を持つ必要があるのではないか?