TechnologyとIntelligenceに憧れて

外資系ネットワーク・エンジニアの独り言。

2021 Vol.11:『アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る -』 藤井保文、尾原和啓 著

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る

 

『アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る -』 藤井保文、尾原和啓 著, 日経BP社, 2019

 

 本書は、現在の日本企業のデジタルテクノロジーへの対応に警鐘を鳴らし、日本において、本質的なデジタルトランスフォーメーションを実現し、日本がグローバルをリードすることへの方向性を示すものである。

 「データ産業革命」とも「第4次産業革命」とも呼ばれる、ここ数年のIT技術の発展に伴うビジネス構造の変化において、一番重要なことは、「オフラインがなくなる世界」が到来することである。このことは、キャッシュレス化や常時オンライン接続、IoTセンサーなどにより、各個人の膨大な行動データが生み出されることを意味し、その結果、社会基盤が再構築され、ビジネスモデルも抜本的にルールの変更をもたらすのだ。モバイル決済の普及により、消費者の購買行動のデータ(消費者の接点情報)が収集できるようになり、行動の可視化をもたらす。

 消費者のあらゆる行動が活用可能なデータになってことで、ユーザーの趣向が時系列で把握できるようになり、欲しいタイミングで価値やニーズを提供するというビジネスが誕生している。これは、ユーザー・エクスペリエンスと行動データが根幹になっている。これは、これまでの短期間に商品を大量販売して終了するというモデルからイベントへの参加のような長い時間にわたる継続的に価値を提供するモデルへ転換することを意味する。つまり、商品は価値を体験し続ける上での接点の一つと見なされるのだ。

 そして、アフターデジタルの本質は、デジタルやオンラインを付加価値として活用するのではなく、オフラインとオンラインの主従関係が逆転した世界という視点転換にある。つまり、完全なオフラインは存在せず、デジタルが基盤となることを前提に戦略を組み立てる思考が必要不可欠となるのだ。アフターデジタルの時代において、「OMO (Online Merges with Offline or Online-Merge-Offine)」というオンラインとオフラインが融合し、一体のものとして捉えた上で、これをオンラインにおける戦い方や競争原理として捉える考え方が重要となる。

 オンラインとオフラインを区別しないアフターデジタルの時代の到来に対して、日本企業はどのように対応していけばよいのであろうか?

 アフターデジタルにおけるビジネス原理の変更に伴い、以下のような変革を行っていく必要がある。

  ・顧客の体験に沿った組織構造と体験寄り添い型の

   ビジョンへの全社戦略の転換

  ・「人・属性」ターゲティングから「状況」に基づいた

   ターゲティングの変革

  ・もの売り切り型のバリューチェーンからサブスクリプション

   モデルのようなバリュージャーニーへの転換

 アフターデジタルの時代には、行動データとユーザー・エクスペリエンスをベースにユーザーを起点とした戦略が必要である。ともすれば、オフラインに主眼を置くビフォアーデジタルの戦略に陥りがちになるが、オフラインとオンラインの区別なく、これらを融合した戦略を実行することが生き残りのカギになるのだ。