TechnologyとIntelligenceに憧れて

外資系ネットワーク・エンジニアの独り言。

2021 Vol. 3:『2025年を制覇する破壊的企業』 山本康正

2025年を制覇する破壊的企業 (SB新書)

 

『2025年を制覇する破壊的企業』 山本康正, SBクリエイティブ, 2020

 

 本書は、2025年の世界に大きな影響力を持つ世界最先端の11社の分析から2025年の世界の未来予想である。本書の冒頭部分は、著者が描く2025年の生活であり、GAFAを中心とした先進企業によりデジタル化された世界が展開されている。この世界では、人々の趣味・嗜好もAIにより制御される世界になっているようだ。

 世界最先端の11社とは、GAFA、ネットフリックス、マイクロソフト、テスラ、インポッシブル・フーズ、ロビンフッドクラウドストライク、ショッピファイである。著者は、これらの企業が社会に大きな影響を与え、メガトレンドによる構造的な変革を起こすと考えている。ここで想定されるメガトレンドとして、「業種の壁崩壊」、「UX(顧客体験)」、「データの利活用」があげられている。

 ここでは、業種の壁崩壊とされているが、これらの世界の最先端を走る企業では何が本業であるか、を決めているわけではなく、一つの事業で得たデータや知見を別の新しい事業にも活かし、シナジーを生むことを目指している。そして、その結果、データという共通項で密接につながったコングロマリット化が進んできている。

 未来を作る企業は、ハード、ソフトを意識せず、ビジョンとミッションを大切にしている。そして、ハード、ソフト、サービスの3つの領域をすべて押さえることに意味を見出している。つまり、この3つの領域のすべてを手掛けていない企業はGAFAのようなコングロマリット企業に飲み込まれていく。ここで言っているサービスはUX(顧客体験)であり、革命の基点ともなるものである。すべての領域を押さえた上で、ユーザーが望む体験の提供の良し悪しがビジネス成否のポイントとなっている。

 前述のメガトレンドを活かすには、全領域ならびに事業をつなぐデータ連携が必須であるため、企業はデータの取得や解析に力を入れている。このデータを活用することにより、提供されるサービスが最適化されていき、レコメンデーションや「おもてなし」のレベルが向上していく。

 本書では、無形資産という概念について触れられていないが、未来を作る企業は少なからず無形資産を保有していると考えられる。無形資産とは、アイデア、知識、社会関係でできた、ソフトウェアや価値のある合意、社内のノウハウなどを指すとされている。この無形資産を活用して、メガトレンドを起こしていると考えられる。そして、この無形資産を保有している企業は、後続の企業との格差を広げていく。経産省のDXレポートにある「2025年の崖」という言葉で危機感が煽られても遅々としてDXが進まない日本企業がこのような未来を作る企業に太刀打ちすることなどできないであろう。

我々日本人はどのように生き抜いていけばよいのだろうか?