TechnologyとIntelligenceに憧れて

外資系ネットワーク・エンジニアの独り言。

2021 Vol. 7:『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』 山本康正

次のテクノロジーで世界はどう変わるか

『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』 山本康正, 講談社, 2020

 

 作者は、「今後のテクノロジーはあらゆるビジネスの直結し、テクノロジー抜きにビジネスは成り立たなくなってくる」とし、テクノロジーの基礎的な教養のための未来のテクノロジー・ビジネスの入門書と本書を位置づけている。

 本書では、近未来を創るメガテクノロジーとして、以下の3つをあげる。

  ・AI:データを使って認識・判断する

  ・5G:データの高速化・大容量を実現する

  ・クラウド:データの大量保存と高速処理を行う

これらのテクノロジーが組み合わされることにより、具体化された新しいテクノロジーが登場してくる。ここに、ブロックチェーンの登場により、データや情報がより効率化・民主化されていく、としている。

 AI(人工知能)は、人間の脳の神経細胞が電気ネットワークでできているのであれば、電気的に人間の脳を模倣することができるのではないか、と研究がすすめられたが、簡単な計算問題や推論はできても、人間のように感覚的に動くことは不可能だという失望から第一次ブームは終息した。その後、1980年代の「エキスパートシステム」の登場により、専門的な知識を持たない人が専門家と同じレベルの問題解決ができるようになると考えられた。だがこれも、専門家の知識をパターン化し、回答となる要素を入れたパターン認識にすぎないため、期待から幻滅へと変わった。そして、現在の第三次ブームでは、クラウドコンピューティングによる計算力の爆発的に増加し、大量のデータを処理することが可能となったことで、AI自身が大量のデータから特徴を抽出するディープラーニング(深層学習)が実用化されてきている。現在のAIができないことは、「善悪」、「倫理」の判断である。これらの問題についてもいずれ解析できるようになることであろう。最終的には人間の感情を可能な限りデータ化する技術が登場してくるであろう。

 5Gの特徴は、「高速・大容量」、「低遅延」、「同時接続」の3つが挙げられる。5Gの高速・大容量や低遅延によって、これまで以上に動画配信が活発になり、動画コンテンツの品質勝負となる。そして、低遅延や同時接続の特徴を生かし、スマートファクトリーの精度も向上させることができるようになる。5Gのチップを使うことにより、工場内のあらゆる機器から情報を取得し、データすることでオペレーションを改善することができるようになり、工場の生産性向上につなげることができる。

 クラウドは、「一つひとつのコンピューターサーバーにデータを保存し、各コンピューターですべての処理をするよりも、ある大きなインフラとしてのサーバー群にあらゆるデータを保存し、そこでまとめてデータの処理も行い、誰もがそこからさまざまなデータを引き出せる」という考え方である。そして、その後サプライヤー側で稼働させているソフトウェアをインターネット経由でサービスとして提供するSaaSという考え方が登場した。現在、クラウドには、動画を含めたさまざまなデータやSaaSやゲームなどのソフトウェアが既にアップされている。今後のクラウドには、OSもアップロードされるようになり、ユーザーが保有する端末機には、インターネット接続機能とログイン認証機能のみとなり、現在よりも安価な端末機に移行していくであろう。

 既存の企業は、現在収益を上げているビジネスを脅かすような新しいテクノロジーを否定しようとする。その結果、FAANG+M(Facebook, Amazon, Apple, Netflix, Google and Microsoft)やBATH(Baidu, Alibaba, Tencent, Huawei)に大きく水を開けられている。このため、新たなテクノロジーに対して、アンテナを立て、いま何が起こっているかというトレンドをつかみ、自社の進む方向性を決断する戦略が必要である。

 テクノロジーに関して日本は世界をリードする存在であるという幻想を捨て、情報は自ら取りに行くことが必要である。