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コロナ時代に人類が考えるべきことは?:BS1スペシャル シリーズコロナ危機『マルクス・ガブリエル コロナ時代の精神のワクチン』

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コロナ時代に人類が考えるべきことは?:BS1スペシャル シリーズコロナ危機『マルクス・ガブリエル コロナ時代の精神のワクチン』

 

 「自由とは好きなように思い通りに行動することではない。自由とは誰かに命令されることなく自らの意志で自らを律して生きることだ。」という冒頭のカントの言葉が重い。とかく倫理感や道徳感が薄れてきている現代社会において、われわれ人類は、自らの意志で自らを律して生きているのだろうか?

 現在のコロナ・ウィルスの増殖は、科学ではウィルスをコントロールできないことを露呈した。けれども、人々は日々感染者数などをチェックしており、科学は民衆のアヘンとなった。ガブリエルは、このような状況においてこそ、「精神のワクチン=哲学」の必要性を説く。

 人間が物質への欲望を持つのは、本能によるものなのか? あるいは幻想なのか?

 人間には物質を楽しむ権利はある。ただし、それが幻想であることを理解すべきである。つまり、幻想であることを自覚し、正しく錯覚することが必要であるとガブリエルは説く。コロナの時代において、一つの原理のみにとらわれる自然主義の考え方や思考が物質のあとに考える、あるいは思考がなく物質のみを考える唯物主義は、人間の精神を蝕む毒である。このコロナによるパンデミックは、人間の行動を可視化し、唯物主義からの解放へと導いている。

 人間は思考する動物であり、思考には限界はない。人間が人間性(思考)を持っていることは普遍性のあるものである。人間は、過去、現在、未来とイメージを結び付けていく。各個人は、錯覚を認識することで自由になることができる。そして、我々をつないでいるものは、現実であり、我々は現実の中でつながっている。

 現在は、善か悪かを道徳的に選択する最後のチャンスである。我々は思考を続け、元に戻るのではなく、本質的で多様な見方を身につけ、善と悪という倫理的な選択を行う必要がある。