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外資系ネットワーク・エンジニアの独り言。

Vol 11:『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』 田中道昭

GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略

 

GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』 田中道昭著, 日本経済新聞社, 2019

 本書は、現在のグローバル経済に大きな影響を与えている米中の巨大テクノロジー企業である、GAFA (Google, Apple, Facebook, Amazon)とBATH (Baidu, Alibaba, Tencent, Huawei)の計8社を分類し比較したものである。
 各社を比較するのにあたり、起源となる事業ドメインごとに米中の2社を比較している。
 まず、アマゾン×アリババでは、両者ともにECから始まった企業ではあるが、もはやEC企業ではない。アマゾンについては、Eコマースから事業領域を拡大して「エブリシングカンパニー」へと変貌を遂げている、としている。一方、アリババは、アマゾンと同様に事業領域を拡大し、中国の新たな社会インフラ企業となっており、オンラインとオフラインが融合したリアル店舗における先進性は、アマゾン以上である。
 次に、アップル×ファーウェイでは、どちらも「ものづくり」からスタートした企業であるが、両社が目指しているものは大きく異なっている。アップルは、MaciPhoneを通じて新たなデジタルライフスタイルを提案しつつ、世界中のアプリ開発者がアプリの提供・販売するためのプラットフォームを構築することにより市場の利益を得ている。これに対して、ファーウェイは、世界最先端のテクノロジーを誇るハードウェアメーカーとして、あくまでも「ものづくり」に徹した戦略をとっている。
 フェイスブック×テンセントは、どちらもSNSを中心に置いたビジネスを展開しているが、戦略は大きく異なっている。フェイスブックは、人と人がつながるためのプラットフォームを提供し、より多くの人々をプラットフォーム上に集めてデータを収集し、最適化した広告で稼ぐ、というビジネスモデルである。だが、個人情報漏洩時のCEOの対応やLibraの事業展開の遅れなど、これまでの好調な事業展開に陰りが見え始めている。一方、テンセントは、SNSを起点にしながら非常に幅広い事業領域にビジネスを展開している。SNSだけでなく、金融サービス、AI、クラウドサービス、リテールの店舗展開など生活のクオリティを向上させるための戦略をとっている。
 最後に、グーグル×バイドゥは、両者ともに検索サービスから事業領域を拡大し、現在では、AIをベースとした自動運転のエリアで開発競争を展開している。グーグルは、世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること、を目指し、整理した情報に対する検索サービスに付随する広告収入を得ている。そして、現在は、高度なAI技術力をベースに自動運転の実現を目指している。これに対して、バイドゥは、グーグルが撤退した中国での検索サービスでは圧倒的なシェアを誇っているが、業績が伸び悩んでいる。このため、人工知能でトップに立つ、というミッションのもと、中国政府から自動運転事業を受託するなど、AI事業に注力している。
  今後、GAFA/BATH内での競争が激化することも予想され、現在の8社とは異なる企業が巨大オンラインプラットフォームとなる可能性もある。そして、巨大オンラインプラットフォームの企業戦略が我々の生活や経済状況に影響することもあると思われる。このため、GAFA/BATHだけでなく、常に世の中の動きを見ていくことが重要なのではないか?