ここ数年、OpenAIのChatGPTやGoogleのGemini、MicrosoftのCopilotの登場により、生成AIの話題が取り上げられない日はなくなっている。そこで、『生成AIで世界はこう変わる』(今井翔太著, SBクリエイティブ, 2024)を読んで、私見を書いてみようと思う。ここで何も断りがないものについては、私の個人的に考えたものである。
かつて(2019年前後)、人口知能が人間の能力を超えるシンギュラリティという現象が起こるのかどうか、もし起こるのであれば、それはいつ頃なのか、ということが盛んに議論された。シンギュラリティとは、「技術的特異点」と言われ、「自律的なAI(人口知能)が自己フィードバックで改善を繰り返し、人間の知能を超える瞬間が訪れるという仮説」を指す。アメリカの未来学者のレイ・カーツワイル氏は、実際にシンギュラリティに到達するのは、2045年と予測している。(シンギュラリティとは? いつ起こるのか、今後どうなるのかを分かりやすく解説|ビジネスブログ|ソフトバンク)
このようなAIに関する議論や予測を一変させたのは、生成AIである。今井氏の書籍によれば、生成AIとは、「新たに文章や画像、音声などをつくり出すことができる人口知能技術の一種」と定義される。2012年頃から始まった第三次AIブームでは、「大量のデータを与えながら、機械が自動的に問題の解き方を学習する「機械学習」のアプローチが主流」となり、「この機械学習を、人間の脳をコンピュータ上で再現した「深い(Deep))」人工ニューラルネットワークで行うのが、「ディープラーニング」で」あり、生成AIは、このディープラーニングによって実現されている。
これまでは、今井氏の書籍にもあるように、「特別なスキルを必要としない賃金が低い仕事であるほど、コンピュータ/AIによる自動化の影響を受ける可能性が高い」というのが長年にわたり共有されてきた主張であった。2013年に発表されたオックスフォード大学のカール・フレイとマイケル・オズボーンによる世界的に有名な論文「雇用の未来」でもこの主張がされている。 だが、生成AIの登場により大きく様変わりし、「高学歴で高いスキルを身につけている者が就くような賃金が高い仕事であるほど、コンピュータ/AIによる自動化の影響を受ける可能性が高い」という主張になっている。2023年にOpenAI社などが発表した論文「GPTs are GPTs」の主張である。この論文では、「影響を受けにくいとされる職業は、ほとんどが手足を動かす肉体労働を行うもの、いわゆるブルーカラーと呼ばれる職種です。一方、影響を受けやすいとされる職業は、エンジニアや研究者、デザイナーなど、高度な判断力や創造的な思考が必要とされるもの、いわゆるホワイトカラーと呼ばれる職種です。」としている。たった10年でコンピュータ・AIにできること/できないことの前提が生成AIの登場により、ひっくり返ってしまったのである。
生成AIを日々の業務に組み込むことにより、これまで人間がやっていた多くのことが自動化され、より短時間でこなすことができるようになる。この結果、人間が得ることができる「自由な時間」が人間に創造性や独創性を発揮させ、新たな発見や発明、芸術的な表現を創出する源泉となる。生成AIは、今後も我々の想像を超えるレベルで進化していくであろう。前述のシンギュラリティに言えば、生成AIの登場がシンギュラリティに到達することなのか、あるいは、その後の生成AIの進化がシンギュラリティなのか、いずれにしてもシンギュラリティには既に到達しているのではないか。人間は、この生成AIと共存し、新たな人類の文化を確立していくことができるのか、あるいは、人類が創造するものとは別の世界になっていくのか。我々も未来は自分の手でコントロールできるように、自分自身の考えを持ち、行動していくことが重要だと考える。






