TechnologyとIntelligenceに憧れて

外資系ネットワーク・エンジニアの独り言。

2020 Vol. 7:『ホモ・デウス – テクノロジーとサピエンスの未来 -』 ユヴァル・ノア・ハラリ

 

 

ホモ・デウス(2巻セット)

 

 『ホモ・デウス – テクノロジーとサピエンスの未来 -』 ユヴァル・ノア・ハラリ 柴田裕之訳, 河出書房新社, 2018

 

 本書は、人類の未来について、特に今後の数十年について描いたものである。

 著者は、過去数千年にわたり人々が取り組むべきことは、飢饉と疫病と戦争の3つであったと総括する。飢饉は何千年もの間人類の最悪の敵であったが、現在では国際的な支援のおかげで飢饉を防ぐことができるようになった。そして、人類は数十年ごとに疫病や感染症に襲われた。人々の途絶えることのない流れに結ばれた賑やかな町は、人類の文明の基盤であると同時に、病原体の理想の温床でもあった。だが、我々は予防接種や抗生物質、衛生状態の向上、優れた医療インフラにより感染症の発生数も影響も劇的に減った。さらに、20世紀後半になり、ほとんどの地域で戦争は稀になった。これは、人々の意識に変化が生じ、戦争が一時的に行われていない状態を平和と考えるということから戦争が起こりそうもない状態を平和と考えるようになった。

このように、我々は飢饉と疫病と戦争を抑え込むことができた。これからの21世紀には、人類は不死と至福と神性を目指していく。この結果、人間を神にアップグレードし、ホモ・サピエンスからホモ・デウスに変えることを目指すことになるのであろう。

他の動物から見れば、既に人類は神である。人類によって、多くの動植物が絶滅し、現代の社会・文化は人間が作り上げたものである。人間がここまで到達できたのは、書字が発明したことが大きく影響している。この書字によって社会をアルゴリズムの形で組織できるようになった。人々はネットワークを形成し、各人は巨大なアルゴリズムの小さなステップでしかなくアルゴリズム全体が決定を下すようになった。つまり、人間を含めた生き物はアルゴリズムであり、あらゆる動物は進化を通して形作られた有機的なアルゴリズムの集合である。アルゴリズムは数式化でき、コンピューター処理が可能である。そして、新しい世代のAIは、人間の助言よりも機械学習を好む。この結果、AIは日々進化している。

産業革命以来、機械化により人々は従来の職を失ったが、新しい職業に移ることができた。これまでは、人間の方がうまくできる認知的な仕事が無数に存在した。だが、今後はこの認知的な仕事においてもアルゴリズムが人間を凌ぐ可能性がある。さらに、心や感情を持つアルゴリズムが登場する可能性も少なからずある。このような状況において、人類はどこにむかっていけばよいのだろうか?

人間自身を脳(アルゴリズム)と身体(ハードウェア)に分離して、常に最適なハードウェアでアルゴリズムを稼働させること志向している人々も存在する。このような人々は文字通り不死を追求している人々である。不死を追求することにより、人類は神になるのであろうか?神になることは至福なのだろうか?苦しみなのだろうか?

本書では、20世紀に疫病・感染症は克服したとしているが、2020年の現在、新型コロナウィルスが猛威を振るい、世界的なパンデミックを引き起こしている。これは、人類が神になろうとしていることに対する戒めなのか、あるいは乗り越えるべき壁が与えられているのか。いずれにせよ、人類は新型コロナウィルスを短期間で絶滅することができない以上、共存する方策を考えていくしか、生きる道はない。