TechnologyとIntelligenceに憧れて

外資系ネットワーク・エンジニアの独り言。

2020 Vol. 4:『資本主義と民主主義の終焉』 水野和夫・山口二郎

資本主義と民主主義の終焉――平成の政治と経済を読み解く (祥伝社新書)

『資本主義と民主主義の終焉 -平成の政治と経済を読み解く-』 水野和夫・山口二郎, 祥伝社新書, 2019

 

 本書は、副題にあるように平成時代の政治と経済について、政治学者と経済学者が対談形式で振り返り、解説しているものである。
 平成の時代は、ベルリンの壁の崩壊に象徴される冷戦の終結社会主義体制の消滅から始まる。そして、1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災、度重なる台風や集中豪雨など多くの自然災害に見舞われた時代である。政治的には、旧来の自民・社会の2党を中心とする五五年体制が崩壊し、数度の政権交代を経ながら、現在の自民党一強時代になった。
 平成時代の経済は、政府の規制を廃し、市場の価格メカニズムを信奉して、自由競争にゆだねることが資源配分にもっとも合理的である、とする新自由主義に基づいた政策が行われた。つまり、日本経済は、市場原理主義に基づき、法律に「禁止」と書かれていなければ、何をしてもよいという市場の論理で動くようになった。この結果、新自由主義を信奉する資本家は、サイバー空間における仮想通貨のような新たな無法地帯をつくり出した。
 この新自由主義の結果、リーマンショックという大きなバブルの崩壊を引き起こし、世界的な大不況を招いた。このリーマンショックからいち早く立ち直ったのは、巨額の公共投資というある種のケインズ政策を実行した中国である。このV字回復により、日本を抜き世界第2位の経済大国に躍り出た。
 現代の日本は、今なおアベノミクスのトリックにかかったままのようだ。日本経済は、リーマンショック以降の長きにわたる不況から回復の兆しが見え始めたところに、安倍政権のアベノミクスが始まり、さもアベノミクスによって景気が回復したように見えた。そして、アベノミクスの成果として語られる、有効求人倍率に上昇についても、200万人の団塊の世代が引退し、120万人の新卒者を社会が受け入れたとすると、上昇するのは当然のことである。さらに、企業の利益は増加しているが、この利益は企業の内部留保となり、従来のように賃金に回ることがなくなってしまった。各企業は、天災や長期不況のような有事に備えて、内部留保を積み上げる行動は合理的なものであるが、労働者の賃金が上昇せず、その結果、消費が低迷するという負のスパイラルに陥っている。
 現在の新自由主義に基づくグローバル化は、相互依存により互いに利益向上を図るものではなく、富裕層の利益を最大化することが目的であったと思われる。これまでグローバル化を推進していたアメリカ、イギリスはグローバル化にメリットがないとして、非グローバル化に転換を図ろうとしている。令和の時代の幕開けにあたり、日本はどのような方向に進もうとしているのか、国民の選択が求められている。